NHKで、2016年から三年に渡って放送された大河ファンタジー「精霊の守(も)り人」(全22話)。
NHKの放送90年を記念して作られたドラマで、1話あたりにかけられている制作費は3億円以上(参考:Asagei plus)との話もあり、NHKがそこまで気合いを入れて作ったドラマならば見ないと損でしょう!!
ということで、2016年の放送開始から、2018年の最終章、そして先日放送された最終回まで、すべて視聴しました。
以下、ネタバレありの感想です。
面白かった
全体的には、一言でいうと面白かったです。
映像美が圧巻でした。ファンタジー世界なのに、本当に存在しているような感覚を覚えさせてくれるリアリティーがありました。
髪型、衣装、装飾品に至るまで、オリジナリティーがあり凝っていて、見ていて楽しかったです。
毎週、放送が楽しみでした。
人物と地域の関連を覚えられない
ただ、とにかく、人物名と地域名を結びつけて覚えることが難しかったです。
やはり、実在しない国名なので、「新ヨゴ国」などとパッと言われてもすぐ忘れてしまいます。
そして、それぞれの国の王(王子)が誰か……なんて話になるとますます記憶するのが困難に。
「カンバルが中村獅童、新ヨゴ国が藤原竜也、ロタがディーンフジオカ、タルシュがイケメン」と、俳優と国名をリンクさせることでようやく覚えられました。
(タルシュ王子だけ、俳優名(高良健吾)がすぐ浮かばないので、わかりやすく「イケメン」と覚えました。)
話が複雑
しかし、人物名と地域名を把握できても、次は誰と誰が味方同士で、誰と誰がどのような敵対関係にあるのかを理解しなければならず、これも難しかったです。
人数が少なければわかりやすいのですが、この作品は重要な登場人物が多く、それぞれの関係が複雑に絡んでいるんですよね。
あんまり単純でもつまらないので難しいくらいでちょうど良いとは思うのですが、話の途中で、「えっ。この人は誰? どこの国の味方だっけ?」と何度も記憶をたどって確認する必要がありました。
覚えた頃にシーズンが終わる
このような苦労を経て、シーズン最終盤頃には地域名・人物名・関係性も覚えられ、ドラマを楽しく見られるようになるのですが、そういうときにその年の放送が終わってしまうんですよね。
せっかく色々覚えても、翌年、新たなシーズンが始まる頃にはほぼ忘れていて、また覚え直しです。
三年に分けず、全22話を毎週一話ずつ一気に放送してくれた方が、せっかく覚えた世界観が一年ごとにリセットされず視聴できるので良かったかもしれないなんて個人的には思います。
悲劇は回避できなかったのか
ストーリーに関しては、まずやはり一番思うのが、カルナ(上地雄輔)はナグル(黄川田将也)に毒を盛らずに済ませられなかったのか?
ということ。
ドラマを見る限り、カルナには四六時中見張りがついているわけでもなく、「毒を飲ませた」とログサム(中村獅童)に報告しつつも実際は飲ませない……ということも可能だったように思います。
ナグルに、暗殺計画があることをこっそり打ち明け、どうにか逃亡させるとか、できたんじゃないのか??
……その流れがなければバルサ(綾瀬はるか)が槍使いになることもなく、「精霊の守り人」という話が成立しなくなるので、仕方ないことではあるのですが、せめてもうちょっと、暗殺を回避するべく最大限に尽力したけどダメだった……というような描写が欲しかったです。
ログサムが精霊になるのは納得いかず
バルサの父を亡き者にし、自身の兄をも殺した、諸悪の根源のようなログサム(中村獅童)が、最後は精霊になるというのは納得いきませんでした。
「精霊」って、響きが聖なる者っぽいじゃないですか? 悪霊とか魔物とかならまだしも。あんな、悪行を重ねた人物が、精霊になんてなれるわけない。
もっと、地獄に行って苦しむべきだと思います。(笑)
バルサの家が質素すぎ
バルサに関しては、最後の最後、タンダ(東出昌大)の家に一緒に住むことになったようで、それは良いのですが、しかしその家が質素すぎます(笑)。
タンダの家は、NHKの公式サイトでその様子が見られます。
(画像出典:NHK精霊の守り人最終章 守り人の世界)
↑外観。……まあ外観は、絵本の中に出てくる魔法使いの家のようで、これはこれでアリなのですが……。
(画像出典:NHK精霊の守り人最終章 守り人の世界)
↑内部。板張りの一間(ひとま)なのですが、どうにもこうにもここ、暮らしにくそうです。床板がゴツゴツで隙間だらけだし(しかも煮炊きの煙を逃すため、屋根には穴が開いている)。
(画像出典:NHK精霊の守り人最終章 守り人の世界)
↑玄関ドアは無く、動物の皮らしきものが一枚、下ろせるようになっているだけ。
窓の格子は木の枝で、風雨がもろに吹き込んできそう。
日本昔話に出てくる貧しい農民の方がもう少しきちっとした家に住んでいるような気がします。
もっと良い家に住んでも良いのでは
この世界の住民がすべてこういう家に住んでいるというならまだわかるのですが、たとえばバルサの生家は、映画で見る中世ヨーロッパの庶民の家レベルではあったというか、玄関ドアもあるし、木のテーブルや椅子もあったりして、もっと文化的だったんです。
まあ、バルサの父は身分が高かった(王の主治医)ですから、一般市民のタンダと住まいに差があるのは仕方ないかもしれません。
けど、バルサって、新ヨゴ国の皇太子を守り抜いた英雄ですよ??
あれだけの働きをした人物なのに、どうして住まいがあんななの?
チャグムあたりが、良い家を提供してあげれば良いのに。
タンダとバルサの性格からして、自分たちにそんな贅沢は要らないなんて言いそうではあるけれど、見ているこちらとしては、物質的にもちょっとは報われてほしいわけです。
日本昔話だって、何か良い行いをして貧乏から金持ちになった人は、家を立派に建て替えていますよ。
バルサが王の槍になっていたら
あと、バルサの今後ですが、ドラマでは、タンダと二人で静かに暮らす感じで終わっていました。
一人の女性として、現実的に考えれば、それが一番幸せな道だとは思います。
ただ、これをフィクションとして、ファンタジーとしての話を楽しむ視点から考えると、バルサが王の槍として活躍し続けるというのもなかなか良かったなと思います。
ジグロの後を継ぐ感じというか。バルサのいない「王の槍」部隊は、弱そうで心配というのもありますし。
「王の槍」を鍛える指導者になるというのも良いかな。
どうもあの槍の腕が生かされないというのはもったいなく感じてしまいます。
ラウル王子は改心するのか
ログサムに並ぶ悪役っぽかったラウル王子(高良健吾)。
あの人は、タルシュ帝国が滅んだあと、「国境を無くし一つの大陸を作りたい」と言うヒュウゴ(鈴木亮平)に担ぎ上げられ、新帝国(?)の主要なポストに就きそうな雰囲気になっていましたが、ヒュウゴはラウル王子を買いかぶりすぎではないでしょうか?
ラウル王子は、自分が少しでも気に入らないことがあると、平気で人にひどい危害を加えてきた人物です。
「ラウルが乗る馬の脚のちょっとした不具合を見逃す」というミスをした部下の片目をつぶしたことも。
そりゃあ部下がミスをすれば罰は必要かもしれないが、そこまですることないだろう?? 上に立つ者としてあんまりにも慈悲がなさすぎる。
あの冷酷無慈悲なラウルが、そう簡単に心を入れ替えるとは思えないのです。
人の上に立つ人物として採用するのはやめた方がいいと思います。今までさんざん人から恨みを買うようなことをしているので人望も薄いんじゃないかなあ。
改心の可能性も?
それとも、初めて戦に負け、泥にまみれ、情けない状況になったにも関わらずその上で情けをかけられたことによるショックで一発改心なるか?
生まれ変わったような善人になって、優れた統治者になれるんだろうか。
そうなれるなら、それが理想ではある。
ただ、そうなった場合も、今まで理不尽に痛めつけた人物に対する謝罪行脚はした方が良いと思うなあ。
一番印象に残ったのはカーム
そして、今回のドラマを通して、一番印象に残ったのはカーム(降谷建志)です。
カームは、登場人物の中でも、けっこうさんざんな目にあっている方(ほう)ですよ。
自分自身が武術で女(バルサ)に負け、尊敬していた父(カグロ)までその女に負け、その父はしまいには目の前で命を絶つし。
心根が卑屈だったら、相当やさぐれてもおかしくない。
でも、最後、カームは前向きに、王の槍としての使命をまっとうしようとしていましたね。
バルサのことも認めて。悔しさを乗り越えたんですね。
ずいぶん明るく爽やかだと思いました。俳優(降谷建志)の演技も上手かったと思います。髪型も役柄に合っていました。
私は、このお話の中で、カームというキャラが一番好きかもしれない。
今後、王の槍として、バルサと同等くらいの強さを身につけてほしいものです。
ドラマが終わって寂しい
そんな感じで、色んなことを思いながら見ていたドラマ「精霊の守り人」もついに終了。
毎週楽しみだったので、もう続きが見られないというのは寂しいです。
最初は設定の複雑さに困惑しましたが、必死に話についていって、最後まで見切ったことには達成感を覚えます。
本格的な和製ファンタジードラマ、面白かったです。ファンタジーって壮大で良いですね。
私は原作の小説を読んでいないのですが、原作を読むと、またドラマとは違った雰囲気が楽しめるんじゃないかと思っています。
機会があれば、原作も手に取ってみたいです。
ナヨロ半島
ちなみに、原作について少し調べることはしたのですが、新ヨゴ国ってナヨロ半島にあるらしいです。(参考:守人・旅人 用語辞典)
ナヨロ……ナヨロって!!(笑)
ナヨロといえば名寄じゃないですか。北海道名寄市。私の生まれ故郷です。
元大関・名寄岩のナヨロ。まさか「精霊の守り人」の世界でナヨロという地名に出くわすとは思っていなかったので驚きました。
原作者さんが名寄から地名を取ったのか、それとも偶然か。
なんだか、「精霊の守り人」という作品との縁を感じてしまいました。